無期雇用派遣とは
「いつからいつまで」という雇用期間を定めていない契約が、無期雇用派遣です。
「無期雇用派遣」は、比較的最近でてきた言葉です。
派遣法と労働契約法の改正により広まりました。
前からあったベーシックな派遣は、登録型派遣とか呼ばれたりします。
- 派遣先での仕事が終わっても、派遣会社と雇用契約あり
- なので、仕事がない期間も給与あり(休業手当)
- 正社員のように雇用契約期間を決めない
休業手当は、原則 平均賃金×60% だよ
一般的な派遣はこちら
- お仕事が決まったら、派遣会社と雇用契約を結ぶ
- 派遣先での仕事が終わったら、雇用契約もおわり
- または同じ派遣先(部署)での仕事が3年たったら契約終了
無期雇用派遣とベーシックな派遣では、雇用契約の終了が大きく違います。
無期雇用派遣は、派遣先で働くかどうかに関わらず、派遣会社との雇用契約が続くんです。
派遣法で同じ派遣先の部署で働けるのは、3年が限度って決まってるの。
会社ではなくて、”部署”でカウントします。
なので、違う部署であれば、同じ会社でも3年働ける、という感じ。
派遣法の3年ルールについては、「誰得?「派遣の3年ルール」はひどい。就職弱者になる理由」をご覧ください。
無期雇用派遣のメリット
無期雇用派遣は、それなりにメリットがあります。
雇用が安定する
ベーシックな派遣だと、派遣先での仕事が終わる、または3年を迎えると雇用契約が終わります。
仕事を探さないといけないし、見つからない期間は無収入。。
けど、無期雇用派遣の場合、休業手当があるので収入面の不安は減ります。
また、「無期の雇用契約」であるため、派遣会社も解雇は容易ではありません。
派遣先で業務内容が変わらない
無期雇用派遣は、正社員とも違う立ち位置です。
正社員は、業務が変わることがあるし、残業は断れないし、異動や転勤も断れない事が多いです。
スーも何度も業務内容が変わったり、勤務地が変更になったりしました。
無期雇用派遣の場合、派遣法の適用対象でもあるため、派遣先で契約内容以外の業務をさせてはいけない。
また、事前に提示されていた残業時間を大幅に超えてはいけないし、勤務時間の変更も勝手にはできません。
「無期雇用」になったからといって、派遣先で業務や条件をコロコロ変えられることはありません。
無期雇用派遣は、給与体系とか就業規則が、派遣会社の正社員とは異なることが多よ(もちろん派遣先とは違う)
3年毎に職場を変えなくていい
職場を変えるって、結構大きなストレスだったりしますよね。
ベーシックな派遣の場合、最大3年しか働けないので、3年毎に新しい職場を探す&慣れる必要がでてきます。
無期雇用派遣の場合、3年を超えて同じ派遣先で勤務することができます。
派遣先の事情で業務がなくなることもあるので、そこは覚えておいてね。
有給の付与日数が増える
有給付与の日数は、勤務年数に比例して付与されます。
3年と5年では、付与される日数が違う。
▼週5勤務で週30時間以上勤務している場合
勤務年数 | 付与される有給 |
---|---|
0.5 | 10 |
1.5 | 11 |
2.5 | 12 |
3.5 | 14 |
4.5 | 16 |
5.5 | 18 |
6.5以上 | 20 |
社会保険や税金の手続き手間が減る
派遣の仕事が終わると、派遣会社で加入していた健康保険や厚生年金などの移行手続きが必要になります。
失業保険をもらうにしても手続きが必要です。
無期雇用派遣の場合、派遣先が見つからない時も派遣会社と雇用契約があるので、保険などは加入したまま。
この辺の手間はかかりません。
無期雇用派遣のデメリット
無期雇用派遣は、ベーシックな派遣と比べてデメリットがあります。
派遣先を自由に選べないときがある
ベーシックな派遣は、派遣先での仕事が決まった場合のみ「雇用契約を結ぶ」ので、仕事を探している間は、派遣会社と雇用契約はありません。
そのため、紹介された仕事を吟味し、断ることもできます。
たとえ、希望に近い仕事でも「この会社はやだな」「やっぱり時短勤務がいいや」など自分の意志で仕事を選べる。
その点、無期雇用派遣はあまり選り好みできない部分があります。
仕事を選ぶ時、すでに派遣会社と雇用契約を結んでいる、つまりは派遣会社の社員という立場です。
なので、あまり断っていると「解雇」となる可能性が無きにしもあらず。
プライベートの都合に合わせた働き方が難しい
派遣のメリットは、自分の都合に合わせた働き方ができること。
育児や介護、趣味、別の本業などに合わせて、時短勤務や週3勤務へ変更したいこともあります。
無期雇用派遣の場合、その辺の融通がききにくくなる。
育児などの場合、期間限定での時短は相談できるとは思います。
ただし、自分の要望というより、派遣会社の規定に合わせての時短勤務。
あと、ひとつの派遣先で仕事をやり終えて、長期休暇がほしいな、旅行で休みたいな、と思っても、派遣会社は「早く仕事を」といってくるはず。
派遣会社は、できるだけ休業手当を支払いたくないので、すぐに仕事をしてほしいんです。
派遣社員の方も、雇用関係があるので「嫌です」とは言えない。(有給を使うなら別)
参照記事:「派遣社員はデメリットしかない」は人によっては本当。
キャリアアップしにくい
仕事がどうしても「派遣さんにお願いしたい仕事」であるため、キャリアアップに繋がりにくい。
もちろん、派遣社員の能力が高ければ業務内容も変わると思いますが、大事な業務は社員にさせています。(当たり前だけど)
また、派遣の場合、業務内容もしっかり決めた上で派遣会社と派遣先は契約を結びます。
そのため、業務外の仕事を派遣先は依頼できないんです。
良くも悪くも仕事の幅が広がらない、ことが起きます。
以上が、無期雇用派遣のメリットとデメリットです。
無期雇用派遣になる方法は2つあって、「無期雇用」は共通なんだけど、採用選考とか待遇が違うのです。
- 派遣で働いていたら、無期雇用派遣のオファーがきた
- 正社員に近いかたちで、まず派遣会社に入社する
次の章からは、その特徴を解説します。
パターン①派遣から無期雇用派遣へのオファー
派遣で働いていたら、派遣会社から無期雇用派遣のオファーがきたパターンです。
無期雇用派遣オファーの理由
ベーシックな派遣から無期雇用派遣へ転換するのは、法律が絡んでいることが多くあります。
先に述べましたが、派遣社員が同じ派遣先の同じ部署で働けるのは、最大3年間。
3年以上の勤務は、派遣法により禁止されています。
その時に、今の派遣先で働き続けてほしいので「無期雇用派遣になりませんか?」と3年目に派遣会社からオファーをもらう場合があります。
もうひとつは、労働契約法の5年ルール。
同じ派遣会社でずっと働いてきた人が対象になりますが、通算で5年働いている場合、派遣会社には無期雇用に転換する義務が発生します。(派遣社員が希望すれば)
詳しくは、こちらの資料をみてね→ 厚生労働省 労働契約法改正のポイント
”派遣社員は同じ派遣先(部署単位)で最大3年しか働けない”というルールは、比較的最近できたもの。
なので、同じ派遣先で5年以上すでに働いている人も多いんです。
または、前の派遣先で3年働いて、今の派遣先ではそろそろ2年・・ という人も通算5年になってきます。
このような理由から、すでに「無期雇用派遣」になる権利を持っている人がいます。
「5年」は、同じ派遣会社であることがポイント。
また、「通算」の考え方は派遣会社に問い合わせよう。
あとは、派遣先が希望する場合。
直接雇用は、会社の制度上難しいけど、働き続けてほしいと希望した場合、派遣会社に相談を持ちかけるケース。
派遣会社と合意が取れれば、派遣社員に無期雇用化のオファーがきます。
パターン①の特徴
一般的な派遣社員として働きながらの無期雇用への転換。
そのため、いろいろと現状維持されることが多いのが特徴です。
給与・待遇
だいたい時給制のまま無期雇用派遣になります。
時給も現状維持か、ちょっと上がるぐらい。
時給制の場合、賞与や退職金は時給に割り戻されているので、無期雇用になったからといって、別で支給されるケースは稀。
待遇も基本同じですね。
業務内容
業務内容は変わりません。
今やっている仕事がそのまま続く感じ。
基本的に勤務時間も業務内容も責任の範囲も同じです。
ベーシックな派遣から無期雇用になる方法
これ、かなり派遣会社の方針が関係してくるんですよ。
大手の中にも「無期雇用は原則しない」みたいな方針をだしている会社もあるし、無期雇用したり、しなかったりと方針も変わる。
派遣会社が無期雇用します、となっても派遣先が料金UPに応じてくれなければ、無期雇用にはなりにくいです。
- 今の派遣先の仕事がなくなったら、新しい仕事を紹介して働いてもらう必要がある
- 見つからない場合、休業手当を出さなければいけない
- 無期雇用派遣には、コストがかかるので料金UPがなければ、赤字
- エリアによっては、派遣の仕事が多くないので、次の仕事の斡旋が難しい
要するに簡単に解雇できない契約なので、条件が整わないと無期雇用したくない、というワケ。
あと、簡単な選考があります。
次の仕事を紹介できるぐらいのスキル・経験はあるか、人柄はどうだ、みたいな。
試験という形ではないかもしれませんが、派遣会社内での検討はあるようです。
その他
派遣会社からのサポートも今までとあまり変わらないはずです。
3年を超えても、同じ環境・同じ業務で働き続けることが可能。
仕事範囲の変更や好成績を収めた、などの理由による時給UPについても、ベーシックな派遣同様に交渉してもOK。
無期雇用派遣になったら、絶対に時給は上がらない、というわけではないです。
パターン②最初から無期雇用派遣で募集している
これは、原則20代の若者が対象です。
ほぼ「正社員」みたいな採用です。
背景
大手派遣会社を中心に若い人材を正社員に近い形で採用し、無期雇用派遣として派遣しているパターン。
若い働き手って本当に少ないんですよ。
労働人口がそもそもいない。なので、大人気です。
でも、「派遣社員」を求めてくる企業には、若い人がいいと思っている企業もあります。
- 上司が若いから、そのアシスタントも若い方がいい
- チームの平均年齢が20代
- 提供サービスのルールがよく変わるから、ついていける人
なので、派遣会社としては、若いスタッフを囲っておきたい。
でも一般的な派遣だと若い人は集まりにくいので、正社員に近い無期雇用派遣枠を作って、採用しよう、という考え。
若い人は、未経験でもスキルがあまりなくても派遣先が見つかりますから。
給与・待遇
月給制で募集しているケースがほとんど。
賞与や昇給制度が用意されています。
また、土日祝日はお休みを約束している場合が多いです。
転居を伴う派遣先の変更は、原則ないです。
また、産休・育休の取得もできて、復帰もパターン①の派遣に比べるとしやすい環境。(サポートが手厚い)
とはいえ、正社員に比べると給与はどうなの?というと、同程度とは言い難いかも。
業務内容
「事務職」で募集している場合とそれ以外もあるので、そこでざっくり選びます。
今は、事務職が多い印象。
仕事内容は、「事務職」というぐらいしかわかっていません。
入社後に派遣先を決めていくので、入ってみないとわからないんですよね。
「1社目は選んでOK」という派遣会社もあるみたいです。
2社目からは選ぶ自由はそこまでない・・
最初から無期雇用になる方法
派遣会社の採用サイトから応募してみましょう。
面接などの選考があるので、誰でもなれるわけではありません。
年齢制限もあったりするし、意外と採用倍率は高めらしいです。(サイトには書いてないけど、基本20代)
特徴的なのは、事務未経験でも採用する方針ということ。
各社の若者を対象とした無期雇用派遣
テンプスタッフ | funtable(ファンタブル) |
---|---|
パソナ | やってない |
スタッフサービス | ミラエール |
マンパワーグループ | M-Shine(エムシャイン) |
アデコ | キャリアシード |
リクルートスタッフィング | キャリアウィンク |
正社員型の無期雇用派遣については、「【徹底解説】20代は無期雇用派遣をやめとけと言われる7つの理由」で詳しく解説しています。
その他
ベーシックな派遣に比べると、サポートが手厚かったり、キャリアアップの支援が受けられたりします。
ベーシックな派遣の場合、仕事内容が変わると「時給あげてください」っていえますが、このタイプの場合はそれはナシ。
月給制なためです。
正社員同様に年一回の人事考課(査定)があって昇給する、というルールの会社が多いはず。
では、待遇なども正社員と同じかと聞かれると、キャリアアップや昇給率に不透明感があります。
20代の若者は、正社員でも大人気です。
だから、大卒で正社員就業していた20代は、普通に転職すれば決定率は高い。
なので、派遣会社が狙っているのは、販売職をしていて未経験だけど事務職に変わりたい、という若者。
無期雇用派遣を選んでいい人、ダメな人
無期雇用派遣のメリット・デメリット、どちらが大きいかは人によって全然違います。
無期雇用派遣を選んでもいい人
以下に当てはまる場合は、無期雇用派遣のオファーがきたら選んでも損はないかと思います。
今派遣で、派遣で働き続ける予定の人
無期雇用派遣になった方が、雇用が安定するし、同じ職場・業務を続けられる、というメリットが大きくなります。
正直なところ、無期雇用派遣になっても辞めるのは意外と簡単。
なので、今の派遣先の仕事が終わって、仕事を探すことになった場合、紹介された仕事が嫌なら他社に登録して仕事を探せばいい。
なので、無期雇用派遣を選んで損はしないんですよ。
派遣での仕事が見つかりにくい人
正社員採用が厳しくなる年代や条件の方は、無期雇用派遣のオファーがきたらとりあえず受けてみては。
正社員を希望していても、オファーがきたら、とりあえず無期雇用派遣で安定を得つつ、就職活動をすればいいんです。
2回言いますがですが、同じ条件で仕事を続けられるし、いざってときの退職は難しくない^^;
無期雇用派遣を選んではいけない人
無期雇用派遣と正社員で迷っている人は、要注意!
20代で正社員希望
20代は正社員でも募集がたくさんあります。
なので、まずは正社員での就職活動をしましょう。
未経験でも採用してくれる企業もあるので、最初から無期雇用派遣を選ぶ必要はないと思います。
30代でスキルと経験が十分にある人
転職市場で人気がありますので、正社員を希望する場合は転職活動をおすすめします。
今は派遣で働いていて無期雇用のオファーがきたよ、であればとりあえず受けるのはアリですが、無期雇用派遣を続けなくてもいいかなと。
やっぱり正社員の方が待遇がいいケースが多いので、就活がんばってください。
人手不足な職種(IT・介護・金融など)
人手不足すぎて、ずーっと募集がかかっている職種は、派遣を選んでいる場合じゃない^^;
経験があれば、年令を問わずに正社員チャレンジした方がいいです。
介護とかは、経験がなくても狙えます。
場合によっては、無期雇用派遣を選ぶのもアリな人
ここは、個人の希望によるところです。
次は絶対に事務職がいい。事務しかやだ
20代の方で、販売職や営業職からキャリアチェンジしたい場合、「絶対、事務職!生涯、事務職」という人は、検討の余地があります。
事務職での募集なので、それ以外のオファーはきませんからね。
来たら断っていいし。
経験を積んだ後に、転職する方法もあります。
大手企業で働きたい
大手企業の採用基準には満たないけど、大手で働きたい場合は、無期雇用派遣はアリな選択です。
直接採用されたくても、学歴や経験、年齢で弾かれることがありますよね。
派遣の特徴として、大手企業でも働けるというのがあります。
採用基準の壁をクリアできる、というメリットがあります。
会社によっては、派遣から直接雇用される場合もあります。
が、それは最初から狙わないほうがいいでしょう。
派遣先の会社によってルールが全然違うので・・
正社員(または契約社員)登用制度がある会社もあれば、特例的に認めるケースもあるし、全くない会社もある。
なので、大手で正社員を目指す場合は、転職活動メインか無期雇用派遣しつつ転職活動を並行することをおすすめします。
無期雇用派遣の疑問あれこれ
ここからは無期雇用派遣の疑問・質問にお答えします。
派遣先で仕事(契約)が終わった。給与はどうなる?
次の仕事が見つかっていなければ、休業手当がでます。
満額でないと思いますが、平均給与の60%はでるはず。
その間に仕事のオファーをもらい、職場見学をする感じです。
普通の派遣で働いているけど、無期雇用派遣になりたい
これは、派遣会社の方針によるところです。
自分が希望してもなれないこともあります。
3年が間近・・という場合は、無期雇用派遣の可能性を派遣会社の担当に確認しつつ、転職活動を並行させていたほうがいいです。
労働契約法の5年問題もあるので、今の派遣先が仕事をすぐに紹介してくれないこともあります。
なので、新しい派遣会社の登録も進めたほうが無難。
無期雇用派遣になったけど、次の仕事は選べるの?
ベーシックな派遣に比べると自由度は落ちます。
大体、業務内容や時給など似たような条件の仕事を紹介されます。
時給が大幅に下がることはないはず(下がったら抗議してOK!)
合理的な理由がない限り、紹介されたお仕事を断ることが難しい、と思っていたほうが無難。
産休育休ってどうなるの?復帰は可能?
できます。
ただ、時短を希望する場合、派遣先が限られてくるので、仕事が見つかるまで時間がかかるかも。
あと、元の職場(派遣先)に戻れるかどうかは、運次第・・
基本は、別の会社に派遣されると考えておいてください。
昇給したりするの?賞与は?
どんな条件で、無期雇用派遣になったかによります。
月給制で正社員に近い感じで無期雇用派遣となった場合、年1回の査定があって、パフォーマンスにより昇給する仕組みを取っていると思います。
賞与も別で支給することがほとんど。
時給制の場合は、賞与は時給に含まれているという体であることが多いので、支給されることは稀。
昇給は、仕事内容が変わった・増えたやパフォーマンスが評価されたなどで交渉する必要があります。
1年働いたら、とりあえず交渉はしたほうがいいとスーは思います。
言わないと上がらない事が多いので^^;
言ったもの勝ち!
時給交渉については、「【例文あり】派遣の時給交渉が成功した人に共通する7つの理由とコツ」をご覧ください。
まとめ
- 無期雇用派遣とは、派遣先が決まっているいないに関わらず、派遣会社と雇用関係がある派遣
- お仕事がない間は、休業手当あり
- 無期雇用派遣になる方法は2つあって、給与・待遇や採用方法に違いがあります
- 無期雇用派遣はデメリットしかないか、というとそんなことはない。人による
- 状況と希望を鑑みて、自分の都合のいいように選択しましょ